横浜美術館とリコーイメージングスクエア銀座に行ってきました。

その二つの展示についてそれぞれの感想を書いています。

 

石田尚志「渦まく光」展

横浜美術館は、石田尚志(いしだ たかし)の「渦まく光」展が開催されていました。
石田氏は、「ドローイング・アニメーション」という手法で、少しずつ線を描きつつそれをコマ撮りして映像化し作品をメインで製作されているようでした。

 

その絵画と映像が並置され、新しいリズムを生み出していて、インスタレーション的な要素もありました。

展示全体の構成として、最初に平面のリズムを示し、音楽へ、立体へと昇華されていくプロセスでされていて、コンセプトとしてはロジカルでわかりやすかったと思います。
以前に大阪の国立国際美術館で見た高松次郎展も、同じように、展示が先に進むにつれ、次元が上がっていくようになっていたのを思い出しました。

 

リズムというのは、形を作り出す段階の前段階として位置付けられるものです。ですので、石田氏が、絵画制作のプロセスの中でリズムをどう扱おうとしているのかを提示しようとしていること自体に興味がありましたし、その中でどういった答えを出しているのかということに関心を持ちながら会場に向かいました。

「リズム」に関するWikiPedia

リズムと形の成立については、例えば、ドゥルーズ&ガタリが『千のプラトー』の中の「リトルネロ」の章などが興味深いと思っています。

 

 

 

石田氏の場合、リズムを対象として扱うというよりも、身体から湧き出るリズムに身をまかせるという印象が強く、作品中に表現されてるのは、そこに表現されたもののリズムというよりも、表現者のリズムだったという印象でした。

 

企画展のあとにコレクション展があって、その最初はフランシス・ベーコンの絵画で、このコントラストがなかなか面白かったです。
ベーコンの絵画もリズムと速度は大きなテーマの一つだと思いますし。(この辺りは、ドゥルーズも『感覚の論理学』を書いていますしね。)

ベーコン自身は、現実を描くことにこだわっていた人で、普段僕たちが見ている身体を、リズムと速度の波の中で肉へと分解して描いた人ですしね。(参考:『肉への慈悲―フランシス・ベイコン・インタヴュー』

 

Lucien Clergue写真展

次に銀座リコーのギャラリーへいきました。
こちらは前からずっと見たいと思ってたルシアン・クレルグLucien Clergueというフランスの写真家の展覧会。

写真展「Lucien Clergue」 / リコーイメージングスクエア銀座 / コミュニティ | RICOH IMAGING

写真家の中では一番好きですね。
ピカソとの親交もあり、パリの美術アカデミーの会長も務めた経歴を持っていて、20世紀の写真界にそれなりの影響を与えた人物だと思っています。

 

感想としては、色んなものの表面の質感へのこだわりが見えて面白かった。

 

本当は、ゼブラ Zebra シリーズというモノクロ写真のシリーズを見たかったのですが、そのシリーズは今回は扱われていませんでした。
Clergueを有名にしたという海 Mer シリーズはかなりよかったです。平面に対する繊細な感性が特徴的だと思います。

闘牛士の写真も撮っていて、それがけっこう迫力ありました。
空気が伝わってくる臨場感のある写真でした。