ジャコメッティの作品は箱根の彫刻美術館でも置いてたけど、最後の方で時間なくてほぼスルーだったので、ちゃんと見るのは初。
ジャコメッティという人は、実存主義とかシュルレアリスムとか、当時の潮流にうまく乗った彫刻家のイメージ。そういう側面が取り上げられて、「対象との距離」とか「記憶を頼りに作る」っていうキーワードが今回の展示の特に前半で強調されてました。引用もちりばめられていたし、そういう哲学的・文学的な見方は、おそらく本人の手記とか関連資料から形成された正当な見方なんでしょう。
個人的に見てて面白いと思ったのは、土台とか足の形。基本でかいし、作品によってけっこう違うんですよね。おそらく、人間本質に迫って抽象化された結果、彫刻が自立困難になったところを、足を大きくして無理やり自立させてるんじゃないかと解釈。概念だけでは自立できないという事実と、そのギリギリのバランスが形として表れてるように感じました。考えすぎで行動できない頭でっかちな人間にとっては、こういうバランスが目に見えるのはいい教訓ですね。
ジャコメッティ本人にとっては、目と鼻がポイントだったみたいなので、実際に正面から対峙して見つめ合ったりしてもけっこう面白いと思います。
あと、生それ自体の無意味さと闘ってる人は楽しめるんじゃないかと。ジャコメッティの醍醐味は、実存と共存する微小な差異が感じられることなので。僕の場合それが足だったわけですが、たぶんもっと色んな差異があって、その中からもし何か差異を読み取れたら、それがその人にとっての生の意味を反映してるのは間違いない。
ジャコメッティ展9月4日まで。並行して、東南アジアのサンシャワー展もやってるのでそっちも是非。東南アジア芸術、今キテるんで。